バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
BF手法を併用した経皮的電気神経刺激 (TENS) による痴呆リハビリシステムの実験的検討
郭 怡史 学敏中川 弥栄子森田 昌宏田中 政春川瀬 康裕福本 一朗
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2002 年 28 巻 p. 71-78

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抄録

アルツハイマー型痴呆は多様な進行性知能低下と見当づけ障害を主症状とする高齢者に多発する神経変性疾患である.その原因は未だに解明されていないため,十分な治療方法は存在しない.今迄,我々は眉間に経皮的電気刺激 (TENS) を行った結果,患者の知的機能と目の対光反応に改善がみられた.本研究では,より効果杓なリハビリ手法の開発を目指し,TENS とバイオフイードバック訓練を組み合わせて実験を行った.アルツハイマー型痴呆患者9名(男性2名,女性7名,平均年齢76.5±5.2歳)を対象とし,従来通りの TENS を行うとともに,瞳孔画像をバイオフイードバック情報とした訓練をも併用した.瞳孔画像をビデオでとらえ,訓練対象に示し,瞳孔が大きくなるように提示した.リハビリ訓練は1試行30分,2日に1回,計10回行われた.全ての被験者において毎試行対光反応の平均瞳孔径,潜時,縮瞳速度と散瞳速度は有意に改善したことは,訓練の即時効果であると考えられている.また,訓練前後に実施した知能検査の得点も有意に上昇したことから,脳活性化効果は時間の経過とともに強化されたと考えられる.さらに,瞳孔画像をバイオフイードバック情報とする有効性が確認され,新しい訓練方法として提案された.しかし,本研究では,脳が確実に活性化された証拠をあげることはできなかった.今後は f MRI や SPECT などの画像技術を応用することは有用であると考えられている.

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© 2002 日本バイオフィードバック学会
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