バイオフィードバック研究
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競争事態におけるα波に及ぼす競争成績と時間の影響について
松本 清佐久間 春夫
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2013 年 40 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

競争は,勝敗という明白な成功/失敗の結果を伴うため,期待や不安などの感情をより強く引き起こすことが予想され,人が日常的に経験するストレス場面のひとつであるといえる.そこで本研究では,競争事態におけるストレス反応の特徴を明らかにするために,脳波のα波成分に対する競争の成績(勝率)と時間の効果を調査した.予告刺激を伴う反応時間課題を,単独で行う条件と競争しながら行う条件との2つの条件下で40試行ずつ実施し,その間に記録された脳波の周波数解析を行い,α波帯域,β波帯域のパワー値,αパワー比としてα/(α+β)を求めた.被験者を勝率順に3群(勝率下位群,中位群,上位群)に分け,群間や条件間の比較,時間の効果を検討した.その結果,全体に共通して,競争条件のα波は単独条件よりも減少したが,時間ともに増加したことが示された.このことは,競争事態では心理的緊張は高まるが時間とともに低下することを反映していると考えられる.しかし,勝率下位群は右前頭部において競争条件初期のα波が単独条件初期よりも減少したが,上位群および中位群ではそのような変化は観察されなかった.右前頭部の賦活(α波の減少)は不安と関連があることから,競争の成績が良くなかった人は競争事態の初期の段階で不安を感じていた可能性が考えられる.以上の結果より,競争事態では覚醒水準は上昇するが時間の効果も生じることが示され,また,競争事態初期の右頭頂部の賦活-不安-パフォーマンスの低下の関連が示唆された.

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© 2013 日本バイオフィードバック学会
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