バイオフィードバック研究
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Print ISSN : 0386-1856
ストレスと森林浴(教育講演)
高山 範理
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2015 年 42 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

森林浴とは1982年に林野庁によって提唱された用語である.森林の自然や生態系を五感で感じることによって,心身の健康回復等を図ることとされる.日常のストレスを離れリラックスできる場所として,森林浴に対する社会的な期待は大きく,今日ではストレスに対するコーピングの手段のひとつとして考えられている.森林浴のストレス低減効果については,ここ10数年でかなり研究が進み,短時間(20分)の森林浴であっても,身体面では,血圧(拡張期・収縮期),脈拍,および唾液中コルチゾール等のストレスホルモンを低下させる,副交感神経活動を昂進させる,交感神経活動を低下させること等が明らかにされている.また,心理面では,気分状態が改善する,ポジティブな感情や回復感が高くなること等が明らかになっている.さらに,長期(二泊三日)の森林浴を行うことによって,体内の免疫細胞であるナチュラル・キラー細胞の活性が昂進する等,体内の免疫能が高まることも明らかになっている.現在,本格的な森林浴を愉しめる場所として,研究者らによる科学的な実験によって効果が証明された森林セラピー基地^[○!R]・森林セラピーロード^[○!R]が全国に設置されている(57ヶ所:平成26年度末).これらの施設では,それぞれの地域特性を生かした散策コースやメニューが提供されている.森林浴が効果的になされるよう案内・助言してくれる森林セラピーガイド,森林セラピスト等の資格を持つガイドが配置されており,ガイドらと一緒に森林浴を行うことで,森林浴の体験の質が高まるだけでなく,高いストレス低減効果が期待できる.また,当地では,森林浴の開始前・開始後に心身の状態を測定することが可能であり,これなどは健康維持・増進を目的として,バイオフィードバックの理念が現場で活用された好例のひとつとして捉えることができるだろう.

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© 2015 日本バイオフィードバック学会
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