バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
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競争事態に対するα波成分の反応に基づいた対人ストレスの評価
松本 清佐久間 春夫
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2015 年 42 巻 1 号 p. 39-46

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抄録

対人ストレスは,人それぞれに受け止め方が異なりその影響もさまざまである.本研究では,日常生活における対人ストレスのひとつとして競争事態に注目し,電気生理学的反応の観点から競争事態の認知の効果を検討するために,予告刺激を伴う反応時間課題を単独で行う条件と競争しながら行う条件の下で,脳波(EEG)の計測を行った.また,競争相手の可視性の影響を検討するために,競争条件では相手の姿が見える場合と見えない場合とを設定した.脳波の周波数解析を行い,α波帯域およびβ波帯域のパワー値からαパワー比としてα/(α+β)を求め,その時間的な変化の特徴を調査することによって,競争事態におけるストレスに対する反応の評価を試みた.被験者の競争事態に対する認知は質問紙を用いて得点化し,下位(競争心が低い)および上位(競争心が高い)の3分の1に属する者を分析の対象とした.その結果,競争心の低い被験者は,見えない相手と競争している時は前半から後半にかけてαパワー比が増加したが,見える相手との競争ではそのような時間的な変化は観察されなかった.競争心の高い被験者は,相手が見える競争条件のαパワー比は単独条件よりも減少したが,相手が見えない競争条件と単独条件との間のαパワー比の差はあまり見られなかった.これらの結果は,競争心の低い人は,相手の可視性による覚醒レベルへの影響は見られるものの,競争事態でのストレスは低いことを示唆している.これに対し,勝利への動機づけが高い人にとって競争事態は大きなストレス刺激となり得るが,相手の姿が見えないことによってそのストレスは軽減する可能性が考えられる.

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© 2015 日本バイオフィードバック学会
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