バイオフィードバック研究
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論文
セルフトークの精神生理学的効果について
今川 新悟松本 清佐久間 春夫
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2018 年 45 巻 1 号 p. 25-32

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抄録

 メンタルトレーニングの1つであるセルフトークは, 不安の解消や自信を向上させる効果, 競技パフォーマンスを向上させる効果があると報告されている. しかし, その効果は主観的な報告が多く, その機序については明らかとなっていない. そこで本研究では, 若年男性を対象とし, ポジティブなセルフトークおよびネガティブなセルフトークの精神生理学的効果を, 脳波 (EEG) を用いて明らかにすることとした.

 実験参加者は19~25歳の健康な男性 (主に大学生) であった. 実験課題は, ポジティブセルフトーク使用時, ネガティブセルフトーク使用時, 安静時の3条件をランダムに1分間ずつ各2回実施し, それぞれの条件において頭皮上13部位 (Fp1, Fp2, F3, F4, Fz, C3, C4, Cz, P3, P4, Pz, O1, O2) の脳波を測定し, 内省報告を得た. 脳波は高速フーリエ変換を行い, トータルパワーとθ, α, β帯域別の含有率を算出した.

 その結果, C4において安静時のθ波含有率は, 両方のセルフトーク条件よりも増加し, F3, C3においてポジティブなセルフトーク条件のα波含有率は, ネガティブなセルフトーク使用時や安静時と比較して減少した. また, C4, Cz, P4においてポジティブなセルフトーク使用時のβ波含有率は, 安静時よりも増加した. これらの結果はポジティブなセルフトークが, 疲労の抑制と関連する前頭部の脳活動や運動指令に関わる中心部の脳活動に作用し, 最適な覚醒レベルをもたらしたかもしれないことを示している.

 本研究の結果は, ポジティブなセルフトークの使用は, 脳を最適な覚醒レベルに導くことによって快適な情動をもたらし, 課題パフォーマンスを向上させ得る可能性を示唆している. さらに本研究では, セルフトークのようなメンタルトレーニングの効果は, 脳波を用いて, より客観的に評価できる可能性も示したと考えられる.

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© 2018 日本バイオフィードバック学会
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