行動医学研究
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原著
健康習慣に対する遺伝要因・環境要因の影響
―行動遺伝学モデルによる1変数遺伝解析―
大木 秀一
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2002 年 8 巻 1 号 p. 31-37

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抄録
目的は包括的な健康習慣に対してどの程度遺伝要因が関与しているかを数量的に評価する事である。
対象は東京大学教育学部附属中等教育学校を卒業した成人双生児である。2000年前半に、卒業生双生児に対して「生活習慣等についての質問紙調査」を実施した。ペアで回答を得ることが出来た同性双生児 (一卵性双生児145組、二卵性双生児14組) を分析対象とした。包括的な健康習慣を表わす指標として以下の基準を採用した。「7~8時間の睡眠時間」「週に1度以上の運動をする」「自覚的なストレスが中等度以下である」「毎日飲酒でない (過度の飲酒をしない)」「喫煙をしない (喫煙習慣なしまたはやめた)」「朝食を毎日食べる」「栄養のバランスを考えている」の7項目を良い生活習慣とみなした。良い生活習慣を取っている個数の合計は0点から7点に分布し、高得点の方が包括的な生活習慣がよいと考えた。
全ての質問項目の回答を得た141組に対して双生児研究法の原理に共分散構造分析を応用し、健康習慣の背後に仮定した遺伝要因・環境要因の関与の程度を推定した。潜在変数としては2種類の遺伝要因 (相加的遺伝要因 (A)・優性遺伝要因 (D)) と2種類の環境要因 (共有環境要因 (C)・非共有環境要因 (E)) および年齢要因を仮定した。最適のモデルはAESモデル (年齢要因を考慮したAEモデル) であった。相加的遺伝要因の寄与は27%、非共有環境要因の寄与は72%であった。
我が国ではこれまで、生活習慣は環境面からのみ検討される事が多かったが、一部で遺伝的に規定されている事が確認された。
量的遺伝学の概念は集団を対象に定義されており個人に対するものではない。また、生活習慣に対する遺伝規定性と言った場合には、単一の遺伝子や生物学的な問題を想定しているわけではない。広く、ある種の行動パターンを選択したり、嗜好するような心理的要因・性格傾向の遺伝規定性をも念頭に置いている。
ただし、健康習慣を全体として見れば70%以上が非共有環境要因により説明されており、個人に特異的な環境要因の影響が強い。それゆえ、環境要因を改善することで生活習慣の是正を図る事は行動遺伝学的な見地からも妥当なものである。生活習慣の評価や改善を論じる上でも遺伝要因の影響を無視し得ないと結論できる。
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© 2002 日本行動医学会
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