行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
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自己臭恐怖症への認知行動療法の適用 : 症状の低減から就労支援まで
谷口 敏淳
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2012 年 38 巻 3 号 p. 247-257

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抄録

自己臭恐怖症とは、自分は悪臭を放っているという思考から生じる、対人恐怖の一病型とされる。しかし、DSMやICDにおいて明確に分類されておらず、認知行動療法による症例報告もわずかである。本研究の目的は、自己臭恐怖症により社会参加が困難であった男性に対して行った認知行動療法の治療過程より、その効果を検討することであった。アセスメントの結果、さまざまな外的刺激に対して"自分は臭っている"と解釈する一貫した認知と、社会的状況への回避行動により、不適応状態が形成されていると考えられた。そこから、症状の低減と社会適応を目標に、標準的な認知再構成法に加え、認知変容および回避行動への対処に向けた複数の行動実験、対人場面を想定したSSTなどを行った。その結果、全16回の介入により、症状の低減と社会活動の広がりを認めた。本例より、自己臭恐怖症への介入における認知行動療法の有効性が示唆された。

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© 2012 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
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