抄録
本研究では、強い苛立ちなどの社会的混乱を呈するDV被害女性に対し、社会的相互作用の行動分析に基づく介入の効果を検討した。クライエントが支援を求めているにもかかわらず、以前の介入はクライエントにとって強化的に機能しておらず、回避や抵抗が起こっていたと考えられた。セラピストはクライエントにとって強化的に機能する刺激を分析し、クライエントの話に明確にうなずき同意を示すことにした。その結果、クライエントは状況を明示するようになり、認知的介入が可能になった。クライエントの社会的刺激に対する認知的評価が改善されたことで、周囲の人間との強化的な相互作用が生起し、慢性的な緊張や興奮および社会的回避行動が低減した。本研究の結果から、DV被害者への介入においては、状況把握の難しさ、接近行動の強化のしにくさといった社会的回避行動をターゲットとし、その変容を検討する重要性が示唆された。