文化人類学
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ウズベキスタンにおけるバザールと生計戦略 : カシュカダリヤ州北部、手織り物売買の事例から
宗野 ふもと
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2014 年 79 巻 1 号 p. 1-24

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抄録
本稿の目的は、ウズベキスタンにおける人々の生計戦略の一端を、バザールにおける手織り物売買に着目して明らかにすることである。1991年のソ連解体に端を発する社会経済状況の変容は、村落部の人々にとっては、集団農場の閉鎖とそれに伴う失業、年金制度などの社会保障の低下、継続するインフレなどの生活基盤を揺るがす問題をはらんだ20年来の経験だった。先行研究では、地縁・血縁に基づいた互酬ネットワークのセイフティネット的側面や、市場経済に適応し経済的に成功をおさめる人々の姿が記述、分析されている。しかし、バザールにおける人々の経済活動の実態と、その生計戦略における位置づけは明らかにされてこなかった。バザールを結び目とする経済は、牧畜/農耕という生業の違いを基盤としており、それは、地縁・血縁に基づく経済ともグローバル市場とも異なった構造を持つ経済だといえる。本稿ではバザールを結節点とした経済のありようを分析し、ウズベキスタンの生計戦略研究に新たな視座を提示することを試みる。明らかになったのは次の点である。手織り物の売り手は生産者である場合が多く、買い手の一定数は仲買人だった。売り手は、結婚式や割礼儀礼、主収入源や売るのに適当な家畜がいない際などに対応するために手織り物をバザールに持ってきていた。仲買人はバザールで手織り物を買い付け、手織り物生産の盛んでない農耕地域で転売していた。そして、双方ともに大きな利益は得ていないことが明らかとなった。売り手、買い手双方に大きな利益をもたらさないにもかかわらず、手織り売買が行われているのは、複数の収入源を確保し生計の安全弁とする人々の生計戦略があるからだ。そして、その実践の場を提供しているバザールとバザールを結び目とする経済は、牧畜と農耕という生業の違いを基盤にして成り立つ。人々にとって、バザールでの経済活動もまた生計戦略において重要な位置づけにある。
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2014 日本文化人類学会
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