防災研究においてレジリエンスとは、一般に災害によって受けたダメージに対する回復力と定義されるが、被災地を歩いてみると、地域コミュニティの再生の核となるような社会的空間があることに気づく。本論では、こうした空間を「レジリエントな空間」と呼び、ゴルカ地震を経験したネパール・カトマンドゥ盆地のパタンで得られた知見に基づき、中国・雲南省の麗江、およびトルコ・イズミル地方のベルガマの世界遺産エリアの事例を検討する。いずれの場合も世界文化遺産を焦点としたツーリズムが展開されているため、ここでは観光客を含めた地域コミュニティの防災を検討し、地区全体の防災力を高める方法を探る。特に地域や都市の防災を考える場合は、それぞれの地域や都市の課題を十分に検討して事前復興計画のなかに問題解決の視点をとりいれること、そして復興や再建それ自体が社会や文化の再生につながっていることが望ましい。ここでは、平時と非常時を貫くレジリエントな空間を防災に活用することを提案する。