文化人類学
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原著論文
アルシ・ディレンマ
エチオピア・アルシ社会におけるガダ再興運動が生み出す抗争と創造
大場 千景
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2021 年 86 巻 1 号 p. 005-024

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抄録

本稿は、エチオピア南東部に居住するアルシの間で20世紀を通して解体の一途をたどっていった伝統的政治体系であるガダの再興運動に焦点をあてている。近年のエチオピアの政治的コンテクストを背景として、多くのオロモ語系諸集団の間で衰退していったガダへの再考や復興に関する議論とその実践が行われはじめている。本稿では、現在進行中の社会現象であるガダ再興の過程を通して、当該社会の人々の社会概念や権力への欲望、ローカルなポリティクスを抱き込みながら、新たに生み出されようとしている社会構造と実践について記述した。論考では、第1に、ガダが現存するアルシ西県での古老へのインタビューとガダの実践の観察に基づいて、解体以前のアルシのガダがいかなるものであったのかを明らかにした。第2に、アルシにおけるガダ再興運動を概観しつつ、アルシ西県のドドラ地域において引き起こされた、ガダ再興運動を巡るサブクラン間の対立を事例として取り上げながら、分節出自体系とガダという2つの社会システムとの間で揺れる人々の社会的葛藤について考察した。地域の共同性を生み出しクランを超えたガバナンスを実現してきたはずのガダが、その再興運動を通してディレンマを増幅しながら、分節出自集団本位のものとして再構築され、分断的な社会の仕組みを作り出していることを記述した。

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2021 日本文化人類学会
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