抄録
本論文では,著者が特別養護老人ホームの入居者1名に対して行った心理支援を振り返り,特別養護老人ホーム
における公認心理師による心理支援の経験の蓄積を目的とした。筆者とA氏との面接は,A氏の他入居者への攻撃的な言動が介護職員に懸念されたことを契機に開始された。開始間もなくA氏は自殺企図を起こした。当初A氏は自殺企図について否認したが,面接中のA氏の機能低下への言及の増加に伴い,A氏が生への両価的な思いを吐露する場面が増え,最終的には自発的に自殺企図について語るに至った。筆者はA氏の心理状態について都度介護職員と情報共有を行いながら,A氏の機能低下による喪失の伴走を行った。考察では,公認心理師が入居者と職員の双方に多様な心理支援を提供できる可能性が示唆された。また,いずれの支援の在り方においても公認心理師法第2条に該当しており,公認心理師として果たすべき業務として妥当性があると考えられた。