2008 年 33 巻 6 号 p. 868-871
症例は66歳の男性。感冒性胃腸炎に伴う下痢と嘔吐の直後から左胸痛・側腹部痛が出現したため,救急車で来院し胸腹部X線写真およびCT上,中等量の左胸水・気胸・縦隔気腫を認め,気胸や特発性食道破裂が疑われた。すぐにEmergency Roomで簡易型超音波を用いて左胸水を観察すると食物残渣の心拍動による対流が認められ緊急ドレナージの必要性を確信した。胸腔ドレーンを挿入し,米粒など食残が流出した。特発性食道破裂の左胸腔内穿破と考えられ,発症後4時間,来院後3時間で緊急手術を開始した。左開胸に上腹部正中切開を追加し検索すると下部食道の左壁に1cmの縦方向の穿孔部を認め,縫合閉鎖し,大網で被覆した。術後経過は良好で13病日に経口開始し21病日に退院となった。本疾患は死亡率が依然高く,即日診断が本疾患の救命に重要である。感冒性胃腸炎を契機に発症する本症の存在も念頭におく必要がある。