2008 年 33 巻 6 号 p. 893-897
症例は57歳,男性。腹痛,頻尿を主訴に近医を受診し,骨盤内巨大腫瘤を指摘されて当科に紹介となった。触診上ほぼ下腹部全体を占める可動性やや不良な腫瘤を触知した。腫瘍マーカーは正常値であった。CT上,回盲部から骨盤腔に広がる13.5×6.5cm大の巨大な腫瘍性病変を認め,充実性成分と嚢胞性成分が混在していた。下部消化管内視鏡では盲腸に5型の腫瘍を認め,生検では高分化型腺癌であった。CT, MRI, DIP,膀胱鏡でS状結腸と膀胱頂部への浸潤が疑われた。以上より盲腸癌,虫垂癌,虫垂粘液嚢胞腺癌を鑑別診断に考え,それらによるS状結腸・膀胱浸潤と診断し,結腸右半切除術,S状結腸切除術,膀胱部分切除術を施行した。病理組織学的には壁外発育を主体とした盲腸癌と診断した。S状結腸浸潤を認めたが,膀胱への浸潤はなかった。壁外発育型大腸癌は稀で,過去の本邦報告例34例とあわせて臨床病理学的特徴を検討した。