日本外科系連合学会誌
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症例報告
術後に甲状腺中毒症を発症した大腸癌の1例
境 雄大
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2008 年 33 巻 6 号 p. 898-902

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抄録

 症例は52歳,女性。血便の精査でS状結腸癌と診断された。頸部に異常所見はなかった。S状結腸切除術が行われ,組織型は中分化型管状腺癌で,病期はSS, N0, H0, P0, M0, StageIIであった。術後に腸閉塞を来したが,保存的治療で改善し,術後25病日に退院した。手術の約2カ月後から頸部腫脹を自覚し,術後87病日の受診時に無痛性の頸部腫脹がみられた。血圧,脈拍,体温に異常はなく,血液検査で炎症反応はみられなかった。甲状腺ホルモンは遊離T3 7.15pg/ml,遊離T4 2.22ng/dl,甲状腺刺激ホルモン0.005IU/ml未満,TSH受容体抗体は正常範囲内であった。無痛性甲状腺炎による甲状腺中毒症と診断された。経過観察とし,発症から3カ月後に甲状腺機能は正常化した。術後の甲状腺中毒症は甲状腺機能亢進による甲状腺クリーゼが多い。無痛性甲状腺炎は臨床症状に乏しいため,術後甲状腺腫にも十分に留意し,本疾患も念頭において診療にあたることが肝要である。

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© 2008 日本外科系連合学会
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