2009 年 34 巻 5 号 p. 776-780
症例は66歳,女性.左乳房に腫瘤を自覚し,左乳癌の診断にて手術予定であったが,その当日に黄疸が発現した.手術を延期してERCPを施行したところ,下部胆管に狭窄を認めた.胆管生検で高分化型腺癌を認め,左乳癌と下部胆管癌の重複癌と診断し,これらに対して左乳房温存術,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を同時に施行した.両者ともに根治切除で,術後約1年6カ月経過した現在再発は認めていない.本症例のように,乳癌と下部胆管癌の重複癌を同時に根治切除しえた症例は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.