日本外科系連合学会誌
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症例報告
保存的治療で治癒しえたHelicobacter pylori陽性の小児十二指腸潰瘍穿孔の1例
境 雄大
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2009 年 34 巻 5 号 p. 851-855

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抄録

 症例は13歳,男性.心窩部痛を主訴に近医を受診した.発症から2日後のX線検査で腹腔内遊離ガス像を認め,消化管穿孔の診断で黒石病院外科を紹介された.腹膜刺激症状はなかったが,血液生化学検査でCRP値が上昇していた.腹部CTでは十二指腸潰瘍穿孔が疑われた.保存的治療を行い,症状・所見は改善した.入院第8病日に食事を開始した.入院第16病日に上部消化管内視鏡検査で,十二指腸球部前壁と後壁にS1潰瘍があり,kissing ulcerを形成していた.入院第17病日に退院した.精査でH. pylori感染が確認され,除菌療法を行い陰性化した.十二指腸潰瘍穿孔は小児の急性腹症の鑑別診断の1つとして念頭に置くべきである.自験例は発症から2日を経過していたが,保存的治療を選択した.小児十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療は良好な成績が報告されている.H. pylori感染の検索は不可欠であり,陽性例では除菌治療を行うべきである.

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© 2009 日本外科系連合学会
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