日本外科系連合学会誌
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症例報告
卵巣が嵌頓した大腿ヘルニアの1例
瀬戸口 優美香平野 明道本 薫碓井 健文清水 忠夫小川 健治
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2009 年 34 巻 5 号 p. 979-982

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抄録

 症例は86歳,女性.主訴は左鼠径部膨隆.2006年4月,左鼠径部の膨隆を自覚し3日後に前医を受診.左鼠径ヘルニア嵌頓疑いで当科に紹介され入院した.左鼠径部に軽度発赤と圧痛を伴う鶏卵大の腫瘤を認めた.腹痛,嘔吐はなく,腹部単純X線像でもイレウスの所見はなかった,腹部超音波では左鼠径部に47mm大のcystic lesionとその内部に腹腔内から連続する構造物を認めた.CTも同様の所見で,大腿ヘルニア嵌頓と診断した.ヘルニア内容は付属器もしくは大網と推定し,緊急手術を施行した.手術診断は大腿ヘルニアで,内容は卵巣と卵管采であった.血流障害はなかったため内容を還納し,ヘルニア嚢を切除してPHS法で修復した.術後経過は良好で術後5日目に退院した.イレウス症状を伴わない嵌頓大腿ヘルニアは,その内容が卵巣などの可能性を念頭に置いて手術を行うことが大切である.

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© 2009 日本外科系連合学会
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