2010 年 35 巻 1 号 p. 61-65
症例は85歳,女性.2007年6月,近医で貧血を指摘された.腹部CT検査の結果,上行結腸に同心円状の多層構造を認めた.注腸検査では蟹爪様の陰影欠損像が認められた.大腸内視鏡検査では管腔全体を占める表面不整な隆起性病変を認めたが,重積は送気により容易に整復された.生検の結果はGroup 4で,回盲部腫瘍による腸重積症と診断され,当科に紹介された.自覚症状,腹部所見がないため,待機的に腹腔鏡下回盲部切除術,3群リンパ節郭清を施行した.術中,回盲部が上行結腸に嵌入していたが,終末回腸の牽引により重積は容易に整復され,定型手術を施行しえた.病理組織診断は高分化腺癌,pSS,INF-β,ly0,v0,pN0,pStage IIであった.成人腸重積症の多くは腫瘍性病変に起因するが,急性腹症で発症し,術前診断が不明なまま緊急手術を要することも少なくない.今回,高齢女性の盲腸癌による腸重積に対し待機的に腹腔鏡補助下手術を施行し良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加え報告する.