2011 年 36 巻 6 号 p. 971-975
症例は72歳,女性.1カ月前からの下血を主訴に当院を受診した.大腸内視鏡検査所見にて肛門縁から4cm口側,12時方向の直腸に18mm大の黒色有茎性腫瘍を認め,生検にて悪性黒色腫と診断した.広範リンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術(APR)を施行した.病理組織学的検査所見は悪性黒色腫,pSM,pN2,ly1,v1,pPM0,pDM0,pRM0であった.術後補助化学療法としてdacarbazine(DTIC),nimustine(ACNU),vincristine(VCR)によるDAV療法を施行した.術後3カ月の腹部CTでは異常所見は認めなかったが,術後6カ月の腹部CTで肝再発を認めた.DTIC,ACNU,cisplatin(CDDP),tamoxifen(TAM)によるDAC-Tam療法に変更したが,術後1年1カ月で死亡した.直腸肛門部悪性黒色腫は悪性度が高く,深達度SMの早期腫瘍であっても急速な転帰をきたすことがあり,術式選択が非常に困難である.