2012 年 37 巻 6 号 p. 1226-1230
症例は59歳,男性.右陰囊部腫大と疼痛を主訴に近医受診後,当院紹介となった.膀胱造影検査,腹部CT検査にて膀胱壁が陰囊まで達する鼠径ヘルニアと診断され,膨潤麻酔併用による腹腔鏡下経腹的腹膜前鼠径ヘルニア修復術(tTAPP)を施行した.内鼠径輪から滑脱した膀胱を認めたが,膀胱壁を切除することなく還納し,ポリプロピレンメッシュで鼠径床を被覆した.本手術は膨潤麻酔を腹膜前腔に注入することで層構造と解剖を理解しやすくし,またエピネフリンによる止血効果により良好な視野で手術が可能となり,膀胱損傷回避の面でも,安全な術式と考えられた.膀胱ヘルニア修復に対するtTAPP法は,正確な診断と治療として有効な術式と考えられた.