日本外科系連合学会誌
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特集
高齢手術患者における術後せん妄
北川 雄一
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2013 年 38 巻 1 号 p. 28-35

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抄録
せん妄は,意識,認知機能,知覚,注意が障害される病態である.術後比較的早期に錯乱状態に陥った患者が,錯覚や幻覚を訴えたり,医療従事者や介護者の指示を理解できなかったりそれに従うことができないなどの症状があれば,せん妄と診断できる.しかし,傾眠や抑うつ状態と類似の症状を呈することもあるため,診断に注意が必要な場合がある.術前からの精神神経疾患の既往などがある場合には,より診断が困難となる可能性もある.客観的な診断を行い,せん妄の程度を評価するために各種のスケールなどが用いられる.発症頻度は4~87%と報告により様々である.発症には,疼痛や麻酔,各種薬物などが危険因子として挙げられている.

国立長寿医療研究センターでの調査では,80歳以上の待機手術患者での発症率は73.9%で,高齢,術前MMSE低値,術前JNCS低値,興奮・多動の既往が術後せん妄発症の危険因子であった.
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© 2013 日本外科系連合学会
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