日本外科系連合学会誌
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症例報告
術前診断に難渋した原発性小腸癌の1例
松本 聖稲田 涼近藤 喜太渡邉 彩子八木 朝彦戸嶋 俊明母里 淑子岸本 浩行永坂 岳司藤原 俊義
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2015 年 40 巻 1 号 p. 61-65

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抄録

症例は60代男性.下腹部痛を主訴に前医受診した.腹部CT検査にてS状結腸近傍に腹腔内膿瘍を指摘され,抗生剤にて加療し退院となる.6カ月後に同様の症状が出現し前医再受診.精査加療目的で当院紹介となった.大腸内視鏡検査ではS状結腸に壁外性の圧排による隆起を認めた.また小腸内視鏡検査では回腸末端から約10cm口側に屈曲を伴う肉芽様病変を認め,生検するも悪性細胞は認めなかった.カプセル内視鏡検査では同部位付近での通過障害を認めたが,隆起性病変は撮影されなかった.S状結腸憩室穿孔に伴う腹腔内膿瘍を疑い,診断的治療目的で手術施行した.回腸病変部は直腸に固着し,周囲に腫大リンパ節を認め小腸癌と診断したため,右半結腸切除,空腸・直腸合併切除,リンパ節郭清を施行した.組織学的には高分化腺癌であった.現在術後9カ月経過するも無再発生存中である.近年小腸癌の診断に小腸内視鏡検査が有効とされているが,今回われわれは小腸内視鏡検査を行っても術前診断を得ることの出来なかった原発性小腸癌を経験したので報告する.

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© 2015 日本外科系連合学会
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