2015 年 40 巻 5 号 p. 928-932
症例は75歳男性.検診にて便潜血陽性を指摘された.下部内視鏡検査を施行したところ,直腸Rsに0-Ip病変を認めEMRを施行した.病理組織学的に高分化腺癌,9mm,sm massive,ly0,v0,断端陰性と診断され直腸前方切除術(D2)を施行した.追加切除標本の病理組織検査では癌の遺残,リンパ節転移は認めなかった.術後1年10カ月後のCT上右肺尖部に径5mmの結節を認めた.その後ゆっくり増大傾向を認めたため術後2年6カ月後に肺部分切除術を施行した.標本の病理組織学検査では直腸癌の組織と極めて類似しており直腸癌の転移と診断された.直腸手術から5年9カ月,肺切除から3年3カ月経過したが,再発を認めていない.大腸sm癌が肝転移などを伴わずに肺転移のみをきたすことは稀であり文献的考察を加え報告する.