2015 年 40 巻 6 号 p. 1085-1089
症例は38歳,女性.左乳房の石灰化を前医で経過観察されていた.3カ月前より同部位に腫瘤が出現し,針生検を施行,浸潤性乳管癌であり,当科を紹介受診した.初診時,左乳房AC領域に5cm大の腫瘤と同側の腋窩リンパ節を触知した.超音波検査では,同部位に46mmの腫瘍と,腋窩に36mmのリンパ節腫大を認めた.胸部CTでは右肺に10mmの結節を認め,肺転移が疑われた.化学療法を施行したところ,乳房腫瘍および腋窩リンパ節には縮小を認めた.肺結節に変化がなかったため,胸腔鏡下に摘出術を施行したところ,過誤腫の診断であった.その後,化学療法を継続し,胸筋温存乳房切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行した.現在,術後3年が経過したが,転移再発なく,内分泌療法を継続している.肺転移を疑う結節が単発性であり,原発巣に化学療法の効果があるにも関わらず,積極的に組織診断を行うことを考慮すべきであると考えられた.