2016 年 41 巻 1 号 p. 121-126
症例は76歳男性で,慢性B型肝炎に対して当院内科通院中であった.S8の肝細胞癌に対してRFAを過去に3回施行した.胸水貯留のため,入院で胸腔ドレナージを施行したが,翌日に腸閉塞を発症した.CTで横隔膜ヘルニアと診断し,イレウス管挿入による腸管内減圧処置を行ったが,改善しないため緊急手術を施行した.小孔を右横隔膜に認め,その部位をヘルニア門として小腸が胸腔へ脱出,嵌頓しており,壊死に陥っていた.壊死腸管の切除とヘルニア門閉鎖を行った.合併症なく経過し,術後24日目に退院となった.
RFA後に発症する横隔膜ヘルニアは,頻度は少ないものの近年報告が増加してきており,嵌頓によって腸管壊死をきたした場合は致命的となる疾患である.今回われわれは,肝細胞癌に対するRFA 後に発症した横隔膜ヘルニア嵌頓による腸管壊死に対して緊急手術を施行し,救命しえた1例を経験したので報告する.