2016 年 41 巻 2 号 p. 238-243
症例は52歳女性.2010年12月に当科でS状結腸癌に対し腹腔鏡下S状結腸切除を施行し,その後術後補助化学療法を施行した.2012年4月に施行した造影CTでB7肝内胆管の拡張を認めた.同年8月の再評価ではB7肝内胆管の拡張の増強,内腔に腫瘍性病変を認めたため精査加療目的に当科紹介となった.明らかな肝内腫瘍を認めず,肝内胆管拡張の所見から肝内胆管癌の診断で肝後区域切除を施行した.病理組織学的には前回の大腸癌と類似した高分化型腺癌像であり,免疫組織化学染色検査の結果も併せて直腸癌肝転移と診断した.これまで大腸癌肝転移が浸潤性に発育することは少ないとされてきた.一方近年では,胆管内進展をきたす大腸癌肝転移は比較的高い頻度でみられるものとの認識に変わってきている.しかし本症例のように,転移巣がほぼ完全に肝内胆管内に発育し腫瘍栓を形成した症例の報告は少ない.