日本外科系連合学会誌
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症例報告
肝肉腫の術前診断のもと肝切除を施行した移植後リンパ増殖症(PTLD)の1例
津田 雄二郎和田 浩志 江口 英利野田 剛広浅岡 忠史後藤 邦仁堀 由美子森井 英一土岐 祐一郎森 正樹
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2016 年 41 巻 4 号 p. 680-687

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抄録

症例は39歳,女性.2011年2月に多発性囊胞腎による慢性腎不全に対して,生体腎移植術を施行した.移植後9カ月に腹部超音波検査にて肝S8に24mm大の腫瘍性病変を指摘され,PET-CTで同部位にFDGの異常集積を認めた.腫瘍生検を施行すると,大小不同の核を有する多型の腫瘍細胞がびまん性に増殖しており,免疫組織化学染色にて,Vimentin陽性,CKAE1+AE3,HSA,EMA,LCAはいずれも陰性であった.以上より肝肉腫と診断し,肝S8部分切除術を施行した.腫瘍の病理組織像は,小型のリンパ系細胞がびまん性に集簇し,その中に大型の異型細胞が散在していた.免疫染色ではCD20陽性,CD3陰性であり,EBV-encoded RNA in situ hybridizationでは大型の異型細胞に対して陽性を示したことからPost-transplant lymphoproliferative disorders(PTLD)と診断した.免疫抑制剤の減量とrituximabを投与し,現在再発なく経過中である.今回,腎移植後に発症した肝原発PTLDの1例を経験したので報告する.

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© 2016 日本外科系連合学会
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