2016 年 41 巻 4 号 p. 703-708
症例は44歳女性.黒色便を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査にて出血性十二指腸腫瘍を指摘,当院を紹介された.腹部造影CTにて十二指腸下行脚に間葉系腫瘍を疑う約70mm大の腫瘍を認めた.血腫を伴っており,準緊急で膵頭十二指腸切除術を行った.病理組織学的所見では膵臓に腺癌成分を認め,異型の強い紡錘形細胞が肉腫様に増生していた.紡錘形細胞は間葉形マーカー陽性,腺癌成分との間には移行像を認め,“退形成性膵管癌・紡錘細胞型”と診断した.術後3カ月に多発肝転移が出現し術後6カ月で腫瘍死した.退形成性膵管癌は稀で非常に予後が悪いことが知られており,血腫形成することは極めて稀なため,本邦の報告例も含め,若干の文献的考察を加え報告する.