2016 年 41 巻 4 号 p. 715-718
魚骨穿孔の中でも重篤化せずに慢性の経過を辿った症例は稀であり1)2),その中でも本症例のように10カ月無症候であった症例の報告はなく,非常に稀な症例を経験した.症例は66歳女性.10カ月前に左下腹部痛を自覚した.その後腹痛なく経過するも,再度腹痛を自覚したため外来を受診し,腹腔内膿瘍,魚骨穿孔疑いの診断にて手術を施行した.腹壁に大網の著明な癒着と硬結した腫瘍を認めた.魚骨と思われる異物を認めたが,明らかな腸管との連続性はなく,穿孔部位も認めなかった.術翌日より経口摂取を再開し,術後5日目に軽快退院となった.