日本外科系連合学会誌
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症例報告
放射線性腸炎に合併した梅の種子による食餌性腸閉塞の1例
大塚 亮齊藤 修治高石 瞳齋藤 元伸平山 亮一三浦 康誠
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2016 年 41 巻 5 号 p. 775-780

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抄録

症例は80歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に受診した.30年前に子宮癌で放射線治療歴があり,前年に腸閉塞での入院歴があった.来院時のCTでは骨盤内の回腸に類円形の異物を認め,口側の腸管の拡張を認めた.前年の入院時も同様の所見であった.イレウス管を挿入し経過観察したが軽快せず,手術を施行した.骨盤内の回腸に広範な放射性腸炎を認め,バウヒン弁近傍の狭窄部に異物が嵌頓しており,肛門側への誘導は不能であった.異物を口側へ押し戻し,健常な空腸部で切開し摘出した.異物は梅の種子であった.放射性腸炎に合併した植物種子による腸閉塞の報告は散見するが,狭窄病変を含む腸管切除が施行された報告が多い.放射性腸炎の腸管は創傷治癒不良なことが知られており,手術の際は状況に応じた術式が考慮されるべきである.健常な小腸からの切開摘出も低侵襲な治療法の一つと考えられた.

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© 2016 日本外科系連合学会
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