2016 年 41 巻 5 号 p. 838-843
症例は43歳,男性.左側腹部痛を主訴に当院救急外来を受診.自然軽快するも1週間後に再び痛みが出現し再受診となった.CTで左腸腰筋前面に線状の高吸収域と周囲の脂肪織濃度上昇が認められ,経十二指腸的に後腹膜腔へ迷入した魚骨と診断された.本人には魚骨誤飲の自覚はなかったが,腹痛が改善しないため手術を行うこととなった.腹腔鏡下にTreitz靭帯近傍の左後腹膜腔に存在した34mmの魚骨と周囲の肉芽腫を摘出し,術後経過は良好で退院となった.魚骨による十二指腸穿孔・穿通は全消化管の0.4%~1.9%と低頻度で,膿瘍を形成することで診断される場合も多い.自験例は後腹膜腔に迷入した魚骨が膿瘍を形成することなく,術前に診断でき,腹腔鏡下に摘出することが出来た.異物によって消化管穿孔・穿通を伴っていても,慢性的な経過で全身状態が落ち着いていれば,計画的により低侵襲な腹腔鏡手術での対応が可能と考えられた.