日本外科系連合学会誌
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症例報告
腹腔鏡観察が治療に有用であった虫垂杯細胞カルチノイドの1例:本邦126例の検討
石山 隼塚本 亮一呉 一眞高橋 里奈杉本 起一神山 博彦小島 豊五藤 倫敏冨木 裕一坂本 一博
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2017 年 42 巻 2 号 p. 212-218

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抄録

虫垂杯細胞カルチノイド(goblet cell carcinoid,以下GCC)は虫垂に発生する比較的稀な腫瘍である.今回,腹腔鏡観察が治療に有効であると考えられた虫垂GCCの症例を経験したので報告する.症例は45歳,男性.繰り返す腸閉塞の診断で手術となった.腹腔鏡観察で,白色の硬結,壁肥厚を伴う虫垂と,回腸末端部を起点とする回腸の拡張を認めたため,虫垂悪性腫瘍の回盲部浸潤と判断し,腹腔鏡下回盲部切除術(D2郭清)を施行した.病理組織検査で虫垂GCCの回盲部浸潤と診断された.術後5年6カ月を経過し,腹膜播種再発を認め,現在も化学療法を継続中である.虫垂GCCは術前診断が困難で,初回手術で適切な術式選択が難しいため,再手術となる症例が多い.しかし,常にその可能性も考えて術中に詳細な観察をすることで再手術が回避できる場合もある.今回われわれは,手術時の腹腔鏡観察が術式選択に有用であった虫垂GCCの症例を経験したので,本邦報告例126例の集計と共に報告した.

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© 2017 日本外科系連合学会
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