日本外科系連合学会誌
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症例報告
腎細胞癌多発膵転移に対して全身化学療法後に膵全摘術を施行した1例
津田 雄二郎山田 晃正板倉 弘明高山 碩俊上田 正射中島 慎介太田 勝也足立 真一遠藤 俊治小野 豊池永 雅一
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キーワード: 腎癌, 膵転移, 膵全摘
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2017 年 42 巻 5 号 p. 853-859

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抄録

症例は70歳,男性.前医で右腎細胞癌に対して右腎摘出術を施行し,経過観察中であった.術後5年7カ月後の腹部造影CTで膵鉤部と膵尾部に35mm大の腫瘤影を指摘され,腎癌の多発膵転移と診断した.前医でスニチニブを導入されていたが,転居に伴い当院を紹介受診した.スニチニブ導入1年後であり,腫瘍はそれぞれ18mmと20mmと著明に縮小し,膵以外の転移は認めなかった.スニチニブは,副作用のため本人の強い希望で継続困難であった.根治切除が可能と判断し膵全摘を施行した.腫瘍の病理組織像は腎癌の膵転移として矛盾しない所見であった. 術後経過は良好で,術後補助化学療法は施行せず,術後1年6カ月無再発生存中である.腎癌膵転移に対する外科的切除は膵以外に転移を認めない場合に推奨されているが,膵全摘と膵部分切除のどちらを選択すべきか定まった見解がない.今回,腎癌術後の多発膵転移に対して膵全摘を施行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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© 2017 日本外科系連合学会
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