2017 年 42 巻 5 号 p. 874-880
症例は79歳女性.C型肝硬変に対して近医に通院加療中であった.今回,下血を主訴に当院に紹介となった.初診時に臍に発赤・疼痛を伴う硬結を触知した.精査の結果,臍転移を伴うS状結腸癌と診断し,S状結腸切除および臍切除術を施行した.術後,化学療法を行ったが,血球減少の副作用が出現し,中断せざるを得なかった.術3カ月後に多発腹壁転移を呈し,術7カ月後に死亡した.肝硬変のために発達した側副血行路に沿った血行性転移と考えられた.
内臓悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Josephʼs Noduleと呼ばれ,比較的稀であるが,予後不良な兆候として知られている.今回,臍転移を伴ったS状結腸癌の切除術後に多発腹壁転移を呈した1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.