2018 年 43 巻 1 号 p. 141-147
症例は52歳,女性.咳嗽を主訴に前医を受診し胸部CTにて,膵頭部に腫瘤を認め精査加療目的に当院紹介となった.腹部造影CTでは腫瘍は早期相から強く造影された.膵神経内分泌腫瘍を疑い,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では膵頭部に3.6cm大の境界明瞭な腫瘍が認められた.病理組織学的検査では血管の周囲に淡明または弱酸性の胞体を持つ上皮様細胞の増殖を認め,免疫染色では,HMB-45,Melan-Aが陽性,S-100が陰性であり,膵臓原発Perivascular epithelioid cell tumor(PEComa)と診断された.膵臓原発PEComaは比較的予後良好な腫瘍であるが,悪性の経過をたどるものも存在する.本症例では,腫瘍は核分裂数,MIB-1標識率ともに低く,悪性度は低いと考えられる.現在術後31カ月再発なく経過している.非常に稀な膵臓原発PEComaの1例を経験したため文献的考察を加え報告する.