日本外科系連合学会誌
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症例報告
術前診断に難渋した小腸出血に対して,術中ダブルバルーン小腸内視鏡を併用し,単孔式腹腔鏡下手術で治療しえた1例
浦川 真哉鄭 充善赤松 大樹
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2018 年 43 巻 1 号 p. 56-61

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抄録

患者は22歳,男性.Crohn病に対して内服加療中であった.下血を主訴に受診し,Hb5.8と貧血を認めた.CT検査や内視鏡検査では,出血源を認めなかった.小腸出血疑いでダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)を行ったが,回腸の輪状狭窄のため肛門からの観察は不可能であった.以上,既往歴からCrohn病に伴う小腸出血の疑いと診断とした.繰り返す下血のため,手術の方針となった.

単孔式腹腔鏡下手術で開始した.右下腹部に腹壁と癒着したMeckel憩室を認め,憩室の口側腸管は高度に屈曲していた.Crohn病に伴う小腸出血を否定出来ず,術中DBEで全小腸を観察した.その際に臍部切開創から小腸を体外に出し,DBEを術者が用手的に誘導することで観察時間の短縮を図った.Meckel憩室以外の出血源を認めず,憩室を含む小腸切除を行った.

術中経口DBE併用は,出血部位の診断と必要最小限の小腸切除を可能とした.また単孔式腹腔鏡下手術は最小限の創部での治療を可能とし,低侵襲手術につながると考えられた.

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