2018 年 43 巻 1 号 p. 72-76
症例は69歳男性.下腹部痛を主訴に外来受診.腹部CTで小腸腫瘍による腸重積症と診断.イレウス管による減圧を行い待期的手術としていたが,入院後腹痛増悪,血圧低下認め,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術となった.術中所見で回腸末端より50cmの小腸が腸管内の腫瘤を先進部として重積し,穿孔を伴っていた.小腸部分切除を施行,さらに回腸末端5cmにも腫瘤を触れたため回盲部切除を追加した.切除検体では腸重積の原因となった球状腫瘤の他,2型腫瘍,粘膜下腫瘍の3病変を認めた.術後創感染を認めたが,術後15日目に軽快退院した.病理結果では3病変全てがDiffuse large B cell lymphomaの診断であり,穿孔部には腫瘍細胞を認めず,圧排による血流障害が穿孔の原因と考えられた.術後PET-CTで悪性リンパ腫の残存病変を認め,R-CHOP療法を施行している.今回,腸重積による穿孔性腹膜炎を呈した回腸悪性リンパ腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.