2018 年 43 巻 2 号 p. 184-189
83歳男性.腹痛,嘔気を主訴に当院を受診.CTで小腸内に異物を認め,同部位より閉塞しイレウスとなっていた.胆囊と十二指腸に境界不明瞭な部位を認め,胆囊十二指腸瘻による落下結石に伴うイレウスと診断した.イレウス管による保存加療を行い減圧は得られたが,胆石の嵌頓所見は著変なく,外科手術の方針とした.入院4日目に単孔式腹腔鏡下イレウス解除術を施行し小腸内の胆石を摘出した.術後の上部消化管内視鏡検査で,十二指腸球部前壁に瘻孔を認めたが,臨床症状を認めないため瘻孔の閉鎖は行わず経過観察の方針とした.術後15日目に退院となった.退院後も胆囊炎や胆管炎を発症することなく外来で定期観察を行っている.術前診断とイレウス管減圧により合併症なく,患者背景を考慮した低侵襲な単孔式腹腔鏡手術を行うことが可能であった.