2018 年 43 巻 4 号 p. 591-597
症例は66歳,女性.脳性麻痺症の既往がある.5年前より急性胃拡張,胃軸捻転症を繰り返し,3年前に腹腔鏡下胃固定術を施行したが,その後2度再発し,いずれも内視鏡的整復を行った.今回,起床時より腹痛,嘔吐を認め,救急外来を受診した.腹部CT,内視鏡検査より急性胃拡張に伴う十二指腸球部捻転と診断し,内視鏡による減圧を施行して症状の改善を認めたが,経口摂取開始後に症状が再燃し準緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると,初回手術の固定は解除されており,間膜軸性胃軸捻転症の再発と診断し,胃瘻造設と胃空腸バイパス術を併施した.術後第6病日より経口摂取を開始し,術後第21病日に退院となった.術後1年間が経過したが,再々発は認めていない.胃軸捻転症に対する胃瘻造設術の報告は散見されるが,胃空腸バイパス術を施行した症例は本邦では報告されていない.脳性麻痺症などの難治性神経疾患患者には,消化管運動障害による胃内容排泄遅延がみられ,胃空腸バイパス術は有効な治療法の1つと考えられた.