2018 年 43 巻 4 号 p. 604-610
症例は60歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診した.上腹部を中心に強い自発痛,圧痛を認めた.腹部造影CTでは液面形成を伴う小腸拡張像を認め,更に骨盤内小腸は壁肥厚・狭窄を伴い一塊となった状態であった.婦人科手術の既往もあり,絞扼性腸閉塞の可能性を考え緊急開腹術を施行した.開腹所見で①回盲部より150cm口側の回腸で腸重積を認め,更に②250cm口側,③280cm口側の空腸内に腫瘤性病変を触知した.①は重積解除後に小腸部分切除を施行.迅速病理で悪性リンパ腫の疑い.③も腫瘍が大きく小腸部分切除を施行.②は腫瘍が小さく,経過観察とした.永久標本で小腸原発濾胞性リンパ腫と診断し,現在他院血液内科にて化学療法施行中である.小腸原発悪性リンパ腫,特に腸重積を契機として発症した例は非常に稀であるが,腸重積の原因疾患として念頭においておく必要がある.