日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
症例報告
直腸低位前方切除術・結腸右半切除術による術後虚血性大腸炎に対して,残結腸全摘術を施行し栄養状態が改善した1例
中太 淳平吉川 貴久松井 信平矢部 信成
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 43 巻 4 号 p. 677-683

詳細
抄録

症例は65歳女性,10年前に直腸癌Rs pT2N0M0 pStage Ⅰに対して低位前方切除術(D3郭清,両側側方郭清あり,左結腸動脈温存),受診3カ月前に肝彎曲部の横行結腸癌pT4N0M0 pStage Ⅱに対して結腸右半切除術(D3郭清,中結腸動脈左枝温存)を他院にて施行した手術既往がある.結腸右半切除術後から下痢と食思不振が出現し,前医で入退院を繰り返していたが,転居に伴い当科を紹介受診した.造影CTでは残結腸炎を認め,中結腸動脈左枝や左結腸動脈は同定できなかったが,残結腸から下腸間膜静脈へ環流する静脈はあり,血流は保たれていると考えられた.注腸造影検査では直腸吻合部より近位側の残結腸に,遠位側に優位な狭窄を認めた.残結腸の虚血性大腸炎と診断,数カ月間の保存的加療で改善がなく,低栄養状態を伴うことから,残結腸全摘術と回腸人工肛門造設術を施行した.術後は経過良好で,初診時1.7g/dlだったアルブミン値は術後11日目には2.7g/dlまで上昇し,栄養状態と共に浮腫も改善して,軽快退院となった.さらに,2カ月後には施設基準値の3.9g/dlまで改善を認めた.大腸癌術後に生じた虚血性大腸炎は報告例が少ない.今回われわれは2回の大腸癌手術後に生じた虚血性大腸炎の症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

著者関連情報
© 2018 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top