2018 年 43 巻 4 号 p. 774-779
症例は69歳,男性.胃部不快感を主訴に当院受診.精査の結果,Bochdalek孔ヘルニアを伴った胃軸捻転症との術前診断で腹腔鏡手術を施行した.術中所見では左横隔膜腰肋三角部にヘルニア囊を有した横隔膜ヘルニアを認め,上記確定診断に至った.手術は脱出臓器を腹腔内に還納後,ヘルニア門の縫縮は行わずヘルニア門を覆うようにComposix Meshで補強して横隔膜に固定した.また,胃軸捻転に対しては,胃の捻転を解除して腹壁に固定した.術後経過は良好であり,以後再発は認めていない.胃軸捻転症は横隔膜疾患に伴う続発性のものが多く,本症例でもBochdalek孔ヘルニアに伴う続発性の胃軸捻転症であった.胃軸捻転症の手術に際しては,腹腔鏡手術を施行することにより横隔膜の詳細な観察が可能となり,横隔膜疾患の除外もしくは確定診断が可能となるため,本術式は有用であると考えられた.