日本外科系連合学会誌
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症例報告
肝硬変と本態性血小板血症に合併した門脈,肺動脈血栓症に対する1治療例
片山 外大小練 研司村上 真廣野 靖夫片山 寛次五井 孝憲
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2019 年 44 巻 6 号 p. 1104-1109

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抄録

症例は72歳女性,1週間前から出現した背部痛,腹痛にて受診した.CTにて門脈―上腸間膜静脈,肺動脈,右腎静脈,下大静脈における多発血栓症と診断した.併存症である肝硬変と本態性血小板血症による凝固異常が主要因と推測し,ダナパロイドによる抗凝固療法を開始した.下大静脈内血栓の消失と門脈血栓の縮小を認めたため4週間投与後にヘパリンの持続静注に切り替えたものの門脈血栓は縮小が得られず,エドキサバンに切り替えて入院80日目に転院とした.経過中には小腸狭窄に対する小腸部分切除や脳出血に対する開頭血腫除去術を必要とするなど治療に難渋した.多発血栓症に対しては効果的かつ安全な抗凝固療法が必要であるが,本症例ではダナパロイドの門脈血栓に対する効果はある程度得られた一方でヘパリンでは不十分であり出血性合併症もみられ,早期および維持治療における治療選択には熟考する必要があると考えられた.

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© 2019 日本外科系連合学会
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