2023 年 48 巻 5 号 p. 513-520
乳腺腺様囊胞癌は稀な乳癌であり,トリプルネガティブであることが多いが予後は比較的良好であることで知られる.今回われわれは結腸癌術後フォロー中に発見された乳腺腺様囊胞癌の1例を経験したので報告する.
症例は82歳女性.下行結腸癌術後フォロー中のC Tで右乳腺内に結節を指摘され当科紹介となった.マンモグラフィーでは両側カテゴリー1,乳腺超音波検査では右乳腺CD領域に8×4×4mm大の不整形の低エコー腫瘤を認めカテゴリー3と判定した.針生検の結果腺様囊胞癌の診断で,全身検査の後に左右乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した.最終病理診断はpT1N0M0Stage Ⅰ,腺様囊胞癌(ER陰性,PgR陰性,HER2陰性,Ki-67 5-10%)であった.補助化学療法は施行せず,術後3年経過した現在,無再発生存中である.
乳腺腺様囊胞癌は他のトリプルネガティブ乳癌と異なり比較的予後良好とされていることを念頭においたうえで,適切な治療選択を行う必要がある.