1994 年 19 巻 4 号 p. 80-83
下部直腸癌に対する肛門括約筋温存術式の適応について, 肛門側壁内進展の面から検討し以下の結果を得た。進行直腸癌116例中, 肛門側への壁内進展を認めた症例は44例, 37.9%で, ~4mmが20例, 5~9mmが17例, 10~19mmが4例, 20mm以上が3例で, 最大壁内進展距離は24mmであった。腫瘍占居部位による壁内進展距離の平均は, Rs, 1.4mm, Ra, 1.0mm, Rb, 2.7mm, RbP, 5.0mmで, 下部直腸ほど壁内進展は高度であった。Rb症例47例について検討すると, 肛門側壁内進展を示した症例は18例, 38.3%で, 最大壁内進展距離は24mmであった。腫瘍肉眼型では規約1型, 2型に比べ3型で, また腫瘍径が大きくなるほど, 環周性が高くなるほど, 壁深達度が進むほど, 壁内進展は高度であった。腫瘍組織型については, 高分化腺癌で29.2%に壁内進展を認め, その平均距離が1.4mmであったのに対し, 中分化腺癌では50.0%に壁内進展を認め, その平均距離は4.0mmと高度であった。