日本外科系連合学会誌
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既往の胃疾患別にみた胃切除術後食道癌の臨床病理学的検討
八木 雅夫橋本 哲夫伊藤 博長谷部 建大西 一朗谷 卓清水 康一三輪 晃一宮崎 逸夫
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1996 年 21 巻 4 号 p. 707-711

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抄録

胃切除術後食道扁平上皮癌症例を既往の胃疾患別に良性疾患16例と悪性疾患7例に分け, その臨床病理学的所見と予後を比較検討した。悪性疾患例では良性疾患例より, 胃切除術から食道癌手術までの経過期間は有意に短かく, 手術時間は長く, 出血量は多い傾向を示した。リンパ節転移の程度や組織学的進行度には有意の差を認めなかったが, 良性疾患例では悪性疾患例より非治癒手術の頻度が高く, 予後は不良であった。良性疾患例ではNo.1リンパ節への転移率が高く, 悪性疾患例でもNo.7への単独転移を認め, また, 2領域郭清例では頸部リンパ節再発を認めた。したがって, 既往の胃疾患が良性例では残胃の切除と胸部リンパ節に加えて噴門部から残胃周囲のリンパ節郭清が必要であり, 悪性疾患例でも胸部リンパ節の郭清, 残胃の切除と腹部リンパ節の再郭清が必要で, さらに, 腫瘍占居部位に応じて頸部リンパ節の郭清を考慮する必要があると考えられた。

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