1997 年 22 巻 6 号 p. 925-928
症例は13歳の女児で胸部異常陰影を指摘され来院した。左前縦隔に位置する内部に石灰化を伴う縦隔腫瘍と診断された。腫瘍は胸腺左葉原発で左横隔神経を巻き込んでおり, これらを合併切除することにより摘出した。摘出した腫瘍は4×5×7cmで比較的軟らかく, 暗赤色調の割面を呈しており, 病理組織所見では, 平滑筋線維性結合織の中に大小の血管が豊富に見られる腫瘍で, 海綿状血管腫と診断された。縦隔海綿状血管腫は全縦隔腫瘍の中でも稀な疾患とされている。術前診断は未だ難しく, また殆どが良性腫瘍にもかかわらず, しばしば周囲の脈管や神経との癒着が見られ, 外科的切除に際してはこれらの合併切除に対する配慮が重要と考えられた。