1997 年 22 巻 6 号 p. 961-966
症例は69歳, 男性。心窩部不快感を主訴に近医を受診し, 7年前より指摘されていた膵頭部腫瘤に対し加療を勧められ入院となった。現症として特記すべきことなく, 75gOGTTは糖尿病型であったがPFD値は正常範囲内であった。腹部USおよびCTでは膵頭部~体部に, 多胞性で大きさ約3cm径の嚢胞性病変が認められた。なお, 同病変はERPにて主膵管との交通がみられた。術前診断は膵粘液性嚢胞腺腫であり, 体尾部切除では膵切除率が高いと考え, 横断切除+胃膵吻合術 (嵌入法) が行われた。術後のminor leakageは保存的に軽快したが, 7カ月目頃より胃膵吻合部の閉塞がみられ, CTでは膵管の拡張と膵実質の萎縮が認められた。術後2年目には膵内分泌能も低下し, 外科的ドレナージの時期も逸し現在に至っている。本術式のような臓器, 機能温存手術を施行するにあたっては, 術後長期管理をふまえたinformed consentが重要である。