1998 年 23 巻 1 号 p. 81-87
手術の際の出血量を減少させ輸血を回避する目的で, 状態予測制御法を用いたコンピュータによる自動血圧制御システムを開発した。動物実験でその安全性と安定性を確認した上で, さらに薬剤の個体差を補正する同定機能とフェイルセイフ機能を備えたファジィ推論による上位判断機能を追加し, 17例の手術患者に低血圧制御を行った。骨盤内臓全摘術で検討してみると, 血圧制御により出血量は有意に減少し, 手術時間も短縮した。これは, 安定した低血圧制御により術野からの出血量が減少し, 複雑な手術操作も容易かつ正確に遂行できるためと思われた。肝機能, 腎機能, 循環機能を経時的に測定したが, 低血圧による悪影響は認められなかった。本システムは, 拡大手術時の出血量を減少させて輸血を回避し, その副作用を予防できることから, 無輸血手術をめざす上で有用であると考えられた。